SI(システムインテグレーション)とは何か。SIの現状と具体的な事例・ランキング等。

近年、IT技術の進化とともに耳にすることが多くなった言葉にSI(エスアイ)があります。SIとはシステムインテグレーションの略であり、コンピュータやソフトウェア、ネットワークなどを組み合わせて利便性の高いシステムを作ることです。顧客のシステムインテグレーションを一括で受託する専門事業者をシステムインテグレーターと呼び、SIを行う人(-er)という意味でSIer(エスアイヤー)と略します。

1.SI(システムインテグレーション)とはそもそも何か。

部門などを超え、横断的にパソコンとソフトウェアとネットワークなどを連携させ一体化することで、利便性を向上させたり、効率性を飛躍させたり、新たなサービスを生み出したりするシステムを作ることを指します。その全体像を定義・設計し、開発・構築する。そして出来あがったものを運用し、保守・管理する。その行程すべてをまとめてSIと呼ぶのです。規模の小さなちょっとしたSIから、社会全般に影響を及ぼすような大規模なSIまで大小さまざまなものがあります。

1-1.SIの具体的事例

皆さんの身近にあるものでイメージのつきやすい巨大SIと言えば、銀行のオンラインシステムです。銀行に口座をひとつ持っていたとしましょう。SIが行われる前の銀行だと、自分が口座を持っている支店でしかお金を預けたり下ろしたりができませんでした。それは、情報の処理がアナログだったからです。あなたが1,000円を引き出したという情報を瞬時に他の支店に共有できなかったわけです。ところが、今は全国に数百もある支店のどこででも、他の銀行やコンビニのATMでさえもいつでも預けたり下ろしたりが出来ます。なんだったらスマホからネットバンキングでも確認することもできるのです。これらを可能にする巨大情報システムを、まったくの白紙から設計し、システムを開発し、ネットワークを構築し、データベースを整え、そしてそれらが間違いなくかつ滞りなく運用されるように保守・管理していく、それがSIなのです。

1-2.SISIerの違い

SIとはシステムインテグレーションのことであり、パソコンとソフトウェアとネットワークなどを連携させ一体化することを指します。また、クライアント(顧客)のITニーズをとりまろめワンストップでSIを受託して提供する情報通信企業のことを、SIを行う人(-er)という意味でエスアイヤー(SIer)と呼びます。日本の場合、情報システムを外部に丸投げする企業が多いことから、SIerが発生しましたが、これは和製英語であり海外では通用しません。日本独特の慣習です。

1-3.SISEの違い

業界外の人にとってもうひとつ混同しがちなのがSEです。ITについて語るとき、SISEも単語として頻出しますので、よく分からないまま聞き流している人が多いようです。SEとはシステムエンジニアの略で、システムを設計・構築する「人」のことです。大規模なSIを行う際には多くのSEが必要になります。

2.日本のIT業界におけるSIの状況

欧米などでは、各大手企業が自前の情報システム部を充実させ内製でSIを行っていることが多いのですが、日本の場合、急激なIT技術の進化を各企業が自前で賄うにはエンジニアが足りておらず、ITを本業としないほぼ全ての大手企業が自社のSISIerに外注しています。

2-1.SIを内製化している一部の企業

日本企業でSIを自前で行っている企業は、ITか情報通信を本業とする限られた一部の企業です。

2-1-1.ITによるサービスを本業にしている企業

楽天、日本マイクロソフト、アマゾンジャパン、LINEなどが代表例です。当然にしてそのITプラットフォームやIT製品こそが自社の差別化であり、最重要な機密になりますのでほぼ内製でやっています。

2-1-2.ゲームを製作する企業

DeNA、サイバーエージェント、コロプラなどゲームの売上比率が高い企業群もほぼ自前で行います。

2-1-3.通信キャリア

NTT東日本やNTTdocomoKDDIやソフトバンクと言った通信キャリアは、もともと自社内にノウハウがあり、かつエンジニアも多数抱えていることから内製で行っていることが多いです。

2-1-4.それ以外の企業

日本の場合、ITや情報通信を本業としないほぼ全ての企業がSIを丸投げで外注しています。メーカーも金融も商社も旅行会社も百貨店もコンビニも、皆さんが知っている大手企業の多くは自社のSIを大手のSIerに委託しているのです。

3.日本におけるSIの歴史とSIerの種類

日本においても1990年以前は大手企業の情報システムは内製で行われていました。しかし、IT化の波が加速しシステムが巨大化する時期と、バブル崩壊の大不況が重なったのが悲劇を生みました。膨大なSEを自社で抱え、育成しながら巨大システムを作り上げるのには大きな人的投資が掛かります。景気がよければ、大手企業の大半がそこに立ち向かったのでしょうが、歴史的大不況を背景に90年代に一気に外注化が進みました。ITエンジニアの国家的育成に出遅れていた日本政府もそれを後押しし、SIを専業とする一部企業に補助金等で支援を行いSIerと呼ばれる企業群を生み出したのです。SIerもその成り立ちの経緯によって、いくつかの種類に分けられますので、本章ではそれを見ていきましょう。

3-1.メーカー系

SIに欠かせないコンピュータを製造していた企業群が、ハードを製造するだけでなくその時代の波に乗ってSIerとなっていったのは自然な流れです。多くの企業がSIerとなりましたが、中でも日立製作所、日本電気(NEC)、富士通が3強とも言うべきグループで、日立ソリューションズ、日立システムズ、NECソリューションイノベータ、NECネッツエスアイ、富士通エフサス、富士通エフ・アイ・ピーなどがそれに当たります。数多くの子会社や関連会社を抱えて一大グループとなっているため、後述する「1社ごとの」売上ランキングなどでは上位に顔を見せませんが、系列を全て合わせるとこの3社の日本国内SI市場における占有率は非常に高いです。3社グループ以外では、キャノンマーケティングジャパンや日本ユニシス等が非常に規模の大きなメーカー系SIerです。

3-2.ユーザー系

通信や金融や商社など、他の業界に先駆けて大規模システム開発が急務となった企業群が、自社の情報システム部門を独立させ、追って他社のSIをも引き受けることでSIer化していったのがユーザー系と呼ばれるSIerです。NTTデータ、野村総合研究所(NRI)、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、みずほ情報総研、三菱UFJインフォメーションテクノロジー、SCSK、新日鉄住金ソリューションズなどがそれに当たります。親会社の大規模な発注を受け、安定的な収益とその経験値を積むことで次第に外部の企業からも受注するようになっていったSIerです。

3-3.独立系

メーカーでもなく、親会社からのスピンアウトでもなく、純粋にSIを専業として発展してきたSIerです。大塚商会、TISインテックグループ、トランスコスモス、富士ソフト、オービック、DTSなどがそれに当たります。SIの波が押し寄せる以前は、複写機事業や計算センターやソフト開発など比較的ITに近しい領域でアウトソーサーとして活躍しており、時代の流れとともにSIerとなっていった企業が多いです。

4.国内大手SIerの売上ランキング

SIの歴史とSIerの流れや系統がざっくり分かってきたところで、日本のSIerの売上ランキングを見てみましょう。1位はNTTデータであり2位の大塚商会の約3倍もの売上高があります。近年は中堅SIerの買収にも積極的で100%子会社の数がどんどん増えています。先述のとおり、日立製作所グループ、NECグループ、富士通グループなどは企業が多数に分かれている関係で「1社ごと」のランキングでは上位にあまり入って来ないようです。

SIerの売り上げランキング!

(出典:日経xTECH、日経コンピュータ)https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/column/17/072600312/072700001/

2017年度においても大きな順位変動はなく、但しNTTデータが初の売上2兆円超えを実現した。

5.業界の課題と今後

IT業界の中でもとりわけSIの領域は、企業に継続的に押し寄せるIT化の波を背景に、市場規模を拡大し続け右肩上がりの成長を維持しています。しかし、前述のように、未曾有の大不況期に最大の加速時期を迎えたこともあり、世界でも稀有な一部のSIerに全企業のシステムインテグレーションが集中的に委託される市場となりました。結果として業界は構造的な問題点を抱えています。

5-1.ゼネコン的な多層構造

顕在している問題点として業界の多層構造化が挙げられます。旺盛なSIニーズを背景に、90年代に国家も後押しし、SIer化を推進しました。助成金なども出してエンジニアの採用・育成を後押ししましたが、それでも各SIerに押し寄せる受注量には全く追いつきませんでした。そのため、自社で受けきれない案件を下請けに丸投げする「ゼネコン型」の企業が発達してしまったのです。大手企業からSIを丸投げされたSIerも自社の社員技術職(プロパー)だけでは大量のプロジェクトをさばききれず、多くの企業(一般的に派遣企業、SES企業、アウトソーサー等と呼ばれる)から技術者をかき集めてチームを編成せざるを得ない状況が続きました。同業のもつ案件に下請けのように入って自社のエンジニアを働かせることが頻発し、クライアントから見て間に5社も6社も入っているような多層構造となっているプロジェクトも珍しくありませんでした。

5-2.高コスト体質

多層構造となっている全ての産業に共通する問題点ですが、結果、中間に入る全企業が利益を確保しようとするので、結果として日本の大手企業がSIerに支払うコストはグローバルに見て、相対的に高コスト体質となりました。また一方で、当然にして末端の企業で働くエンジニアの待遇も悪くなりました。それがこのSIにまつわる業界の最大の問題点です。

6.さいごに

歴史的な背景も含め、日本特有のゼネコン型SIが発生し発展しましたが、上述のような大きな課題があります。今後は、国家戦略として大量のエンジニアの育成に総力を挙げるべきです。また、大手や中堅のSIerも出来る限り自社のエンジニアを率先して雇用し教育することで、他社からのエンジニアの提供を必要する度合いを下げていくべきです。